所長の本棚





:: 2012/05/16(Wed)


短編ミステリー集。収録5作のタイトルと主人公は以下のとおり。

「陽だまりの偽り」痴呆気味の老人
「淡い青のなかに」中学生の息子を持つキャリアウーマン
「プレイヤー」市役所職員
「写心」地方の写真館のカメラマン
「重い扉が」商店店主

「陽だまりの偽り」が断トツに良い。痴呆症の兆しを嫁に気取られたくないプライド高き老人が、自分の不自然な行動を隠そうと小さなウソを重ねるなかで抜き差しならない窮地に追いつめられていく。ヒッチコックのサイコスリラーのような気配を漂わせるストーリーには、あっと驚くうれしい結末が用意されている。先に読んだ『傍聞き』の4編とあわせた9編のなかでも、これがマイ・ベストです。

  1. 未分類
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傍聞き :: 2012/05/16(Wed)

双葉社
発売日:2011-09-15


人情味豊かな短編ミステリー集。陰影に富む人物造詣、巧みな伏線を敷いたストーリー、緊張感のある無駄のない文章で読ませる。収録作のタイトルと主人公は以下の通り。

「迷走」救急隊員
「傍聞き」家庭では娘との関係に悩む女性刑事
「899」消防士(899は「要救助者」を意味する符牒)
「迷い箱」更生保護施設を営む女性

甘過ぎないエンディングで読後感は良い。他の作品も続けて読みたいと思った。

  1. ミステリ
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日本語防衛論 :: 2012/05/15(Tue)

小学館
発売日:2011-04-13


ユニクロや楽天が行なっている(たぶん、いつまでも続かないでしょうけど)英語の社内公用語化に象徴される英語支配の現状に警鐘を鳴らし、"日本語防衛"の方法を提言する本です。

書名の"防衛"は比喩ではなく、文字通り国防の意味です。このままの趨勢が続くと日本が滅びるというほどの危機感に、著者は突き動かされています。なにしろ、最初の一文がこうです——。

戦後、日本人は「愛国心」と「防衛意識」を完全に失ってしまいました。それを回復しようとして、私はこの「日本語防衛論」を書きました。日本語を愛すること、護ること。これが日本を愛する、護る第一歩です。日本の国防にはまず日本語の防衛が必須です。(序文P.4)



ついていけないかなと思いましたが、展開に説得力があり、いまの日本の言語状況は危険だと思うようになりました。とくに、「自己植民地化意識」の指摘は真剣に受け止めなくてはならない指摘だと思います。


法律で日本語を護らなければならない(P.176)、という指摘は、この本を読む前なら突拍子もないと感じたでしょうが、英語社内公用化によって日本人が社内で日本語を使う言語権が奪われている現状を考えると、たしかにそういう必要もあると思えてきます。フランス、ポーランド、スウェーデンなどの例も紹介されています。

2006年、EU首脳会議でフランス代表者が英語で演説したことに怒って退席したシラク大統領(当時)のことばが印象に残りました。

一つの言語・文化による世界の支配など到底認められない。多くの言語があることはEUにとって確かに負担である。しかし、各国の存在意義はそこにあるのだ。(P.183)



ちなみに、話者人口を見ると日本語は世界で第8位、1億2500万人(2.1%)。これだけの人口があるからこそ、すぐれた文学作品も生まれたし、さまざまな知見が日本語で発表されているわけです。そのことにもっと感謝し、自信を持ち、母語を護る必要があると思わされました。良い本に巡り会えました。

  1. 歴史・文化
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ガリレオの苦悩 :: 2012/05/14(Mon)

文藝春秋
発売日:2011-10-07

この作者のものとしては特別感心するようなレベルではないが、ごく気軽に読めるミステリ短編集です。少し読み進んだあたりで、同じ本を買っちゃったかなと思ったけど、テレビで見ていたからそう感じただけで、やっぱり読むのは初めてみたいでした。

  1. ミステリ
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空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む :: 2012/05/10(Thu)


地図が掲載されているのだが、その地図上のどこの話を読んでいるのかがよくわからないことが多く、イライラした。「空白の5マイル」と言いながら、現地の人が出てきて「そこなら行った」とか「見た」とか言っているようにも読める。同じ空間(または近接した空間)で著者自身の2回の探検があり、過去の外国人による歴史的探検があり、それらが凝った書き方で行きつ戻りつするので、読みづらい。地図と突き合わせて頭を整理しようとすると、確認したい地名が出ていなかったりする。現在地がわからないデパートのフロア図を見ているような気分になった。私の頭が悪いのか、几帳面すぎるのか、どっちかだろう。

高地とは異質の困難と危険があることはよくわかった。エベレストの頂上で死ぬなら英雄的だが、こんなところで死ぬなんてバカみたいという不条理の恐怖が迫って来た。

  1. ノンフィクション
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